研究代表者
研究概要
今後の温暖化の進行に伴い、南極氷床が急速に縮小する懸念が高まっている。氷床融解が大規模に起きれば、海面上昇を招くだけでなく、それがドミノ倒しの1枚目となり、様々な気候ティッピング要素へグローバルに連鎖する可能性があり、その将来予測の精度向上は世界的な重要課題である。この課題に取り組むには、近未来のアナロジーとされる過去の温暖期における南極と南大洋の変動に関する総合的な研究が有効である。現在、大規模な氷床縮小を導く氷床末端部のキープロセスとして、海洋性氷床の不安定性と海洋性氷崖の不安定性が提案されており、将来予測を左右する焦点となっている。そして、これらのキープロセスは、南大洋の大気−海洋循環構造の変化によって引き起こされると考えられている。今後の南極氷床の変動と種々の相互作用を予測するにはこれらの連鎖反応の包括的な理解が不可欠である。
本計画研究では、新たに開発・高精度化した地球化学的手法などを海洋地質コア試料に広く適用し、過去の温暖期における南極氷床と南大洋の大規模な変動を高時間解像度で復元する。データを総合的に解析することで、将来直面するような温暖気候下における南極氷床・南大洋の実像に迫る。領域内の各班と連携して新学理「グローバル南極学」の創成に貢献する。
キーワード
超氷期、完新世、海洋堆積物、南大洋、南極氷床